言語聴覚士 樋口 明香

一人ひとりの患者さんと向き合う

自己を高められ、やりたい仕事ができる場所を求めて

就職活動をするにあたり、言語聴覚士1年目から分野を限局せず、多くの経験を重ねて、知識・経験の土台を作りたいと考えていました。リハビリテーション部門では超急性期から生活期まで、全ての病期に対してリハビリテーションを提供しているため、言語聴覚士として幅広い経験を積むことが出来ることに魅力を感じました。また摂食嚥下の分野に興味があった私にとって、嚥下リハビリテーションにおいても研究が盛んな藤田医科大学なら入院患者さんに研究成果を還元でき、かつ今後のリハビリテーションへの展望を広げることが出来ると考え、入職を希望しました。

患者さんと向き合うことの大切さ

最初の赴任先は回復期リハビリテーション病院である七栗記念病院で、ここでは脳血管障害を対象としたリハビリテーション医療を中心に行っていました。担当になった患者さんの機能向上のため、症状の分析にたくさんの時間を費やしました。一人ではなかなか上手くいかないこともありましたが、先輩から多くの助言をもらい、ひとつひとつスキルアップし、解決していきました。また、定期的に行われる患者さんごとのカンファレンスでは、言語聴覚士だけではなくさまざまな職種からの情報をもとにご本人の今後の生活を考え、リハビリテーションのメニューに活かすことを学びました。急性期病院から回復期リハビリテーション病院へ転院してきた患者さん達は、今後どのような生活になるのか、不安な気持ちを抱えている方が多いです。退院後の生活を一緒にデザインしつつ、それに沿った目標を決めて治療を行うことで、患者さんの不安をモチベーションに変えることができます。

患者さんの1日の中で私が行う治療の1時間の重さ。この1時間を有効な時間にするため、患者さん一人ひとりとしっかりと向き合うことの大切さを七栗記念病院では学ばせてもらいました。

異動を経験して、言語聴覚療法の幅の広さを実感した

楽しかった七栗記念病院でしたが、6年目に藤田医科大学病院に異動となりました。大学病院では回復期リハビリテーション病棟では見かけなかった小児や難病の患者さんも担当し、言語聴覚療法の幅の広さを体感しています。現在私は、高次脳機能障害や摂食嚥下障害、小児リハビリテーションを中心に臨床を行っています。藤田医科大学病院では嚥下障害の治療にも特に力を入れており、嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査の回診を週に2回ずつ行っています。そして、週に1度、リハビリテーション科医、歯科医師、摂食・嚥下障害看護認定看護師、耳鼻科医師、言語聴覚士が集まり、嚥下カンファレンスを行っています。ここでは検査動画を供覧しながら、症状の把握・共有、治療方針を全員で話し合います。チームでカンファレンスを行うことで知識の習得にもつながり、また職種によって視点が違うため、さまざまな面から嚥下リハビリテーションについて学ぶことが出来る機会となっています。

そして、異動してからは言語聴覚士チームのリーダーとして後輩や学生指導を行う機会が増えました。人に教えることが一番自分の勉強になります。患者さんのプログラムを立案してもらい、そこで私の知っていることは共有できますが、分からないことは一緒に調べます。学生の皆さんにも実習を通して言語聴覚士の魅力を伝えられることができればと、日々精進しています。

回復期リハビリテーション病棟を離れるときは少し寂しかったですが、患者さんの長期予後とそれに合わせた介入を経験できたことは急性期での治療にとても役立っています。症状を分析すること、そこから患者さんの退院後の生活を予測し、それに沿った目標を立て、プログラムを考える。急性期ではリハビリテーションの時間は限られており、また患者さんが退院した後のことは分からないことが多いですが、回復期リハビリテーション病棟で身につけたスキルがそれを補ってくれています。

症状の分析、その後の生活を見据えたアプローチを徹底した経験が、限られた時間内での症状分析に生かされているのではないかと感じています。現在の急性期は、異動を経験したからこそ見える現場となりました。

仕事と家庭の両立を支えてくれる環境

幅広い分野に関わる急性期の仕事にも慣れ、言語聴覚士の仕事にますますやりがいを感じてきたところで、この4月に私は結婚しました。正直仕事に影響が出るのではないかと不安でしたが、職場には、仕事と家庭を普通に両立させている女性の先輩がたくさんいて、皆さんのアドバイスが背中を押してくれました。出産・育児といったライフイベントの中で、産休、育休を取得し、復帰してからも短時間勤務が出来る、仕事と家庭の両立を支えてくれる環境です。

福利厚生の充実も、日々の仕事のモチベーションに繋がっています。1年を通して自分の好きなタイミングで必要な福利厚生を選択できるため(カフェテリアプラン)、その年その年で使い分けができることが魅力です。これまでは家賃補助を主に選択していましたが、今年度は家族と過ごすリフレッシュ時間に使おうと考えています。将来についてはまだ漠然としていますが、仕事をしながら子育てもできる環境を最大限生かし、充実した人生を送りたいと思っています。

言語聴覚士として自身が成長できる場 応援してくれる環境で働く喜び

私にとって、出来なかったことが出来るようになった瞬間に立ち会えること、またその喜びをご本人・ご家族と共有できることが無上の仕事のやりがいです。特に、「食べること」は生きていく上で必要不可欠です。リハビリテーションを経て久しぶりに食事が開始となった時、患者さんの味を噛み締めているような表情を見ると、生きていく上で大切な部分に関わっているのだな、と実感します。言語聴覚士の仕事に就くことができた喜びとともに、仕事にやりがいを感じられる職場に満足しています。大変なときに助けてくれる先輩・同期・後輩がたくさんいることは、とても心強いです。これからも「一人ひとりの患者さんと向き合うこと」を土台として、日々臨床に励んでいきたいです。お互いを信頼し、高め合えることができるこの環境で、皆さんと一緒に患者さんにリハビリテーション医療を提供出来ることを楽しみにしています。

 

樋口 明香

言語聴覚士
愛知淑徳大学コミュニケーション学科卒
2014年度入職 藤田医科大学七栗記念病院リハビリテーション部
2019年 藤田医科大学病院リハビリテーション部

 

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