医師 八木橋 恵

直感を信じる

リハビリテーションと出会ったきっかけ りんごと桜のまち 弘前で育って

生まれは青森県、出身は弘前大学です。春には弘前城に桜が咲き、夏はねぶた祭り、秋は紅葉が綺麗で、冬には雪が積もります。

医学生の頃、訪問看護の実習で神経難病の患者さんに「頑張ってください」と言われました。私は困りました。いずれ動くことができなくなるその方のために私が頑張れることは何だろう?「頑張って」と言われたけれど、何をどのように何を頑張れば目の前の医療、患者さんに貢献できるのだろう。ふと頭に浮かんだのが「リハビリ」です。「リハビリ」なら頑張れることがあるんじゃないか、と。

時は流れ、研修医2年目。神経内科研修中、脳梗塞の患者を受け持ちました。「私は仕事に戻れますか?この目は治りますか?」 その方は現役の新聞記者でした。半盲の症状が出ていました。正直に言うと、私は上手く答えられませんでした。その後、これは「リハビリ」のことだとまた気づきました。そこで「リハビリテーション医学」を勉強しようと思い立ちました。地元青森から出たことのなかった私でしたが、この直感を信じてリハビリテーションを学ぶべく、県外に見学に行くことを決めました。(当時青森県にはリハビリテーション科医の研修ができる場所が無かったのです)

世界トップレベルのリハビリテーション医療 最強の回復期リハビリテーション病棟

それから全国に見学に行きました。とても悩みました。リハビリテーションを勉強したい気持ちはありましたが、リハビリテーションを3年目から専攻することには漠然と不安がありました。周りにはリハビリテーションを専攻する先輩や同期はおらず、リハビリテーション科という診療科が選択肢に上がることはとても珍しいことでした。

こちらの教室の理念はなんですか、教育方針はなんですか、と聞きまくりました。今思うと、とても熱心で厄介な見学者だったと思います。でも、初めて会うリハビリテーション科医の先生方はどこに見学に行ってもとても優しくて、色んな方に親身に相談に乗っていただきました。それでさらに悩みました(笑)。

悩みに悩み、最後は藤田医科大学に入局を決めました。最先端の研究や設備があり、全国から医局員が集まって、そこでリハビリテーション科医として育っていること。そして、世界トップレベルのリハビリテーション医療を行っている、と揺るぎない自信とプライドがあり、各地へ発信していること。七栗記念病院の先生より、「最強の回復期リハビリテーション病棟」という本も頂きました。ああ、ここはリハビリテーションをやるなら世界一で最強なんだと(笑)。違和感はありませんでした。青森から初めて出る私にとって、それはとても大きいことでした。それから、医局・リハビリテーション部門全体の団結感も好きでした。医局長や若手の先生方が根気よくメールのやり取りをしてくださった安心感もあり、教育への熱意も感じました。そこで、私は藤田医科大学を選びました。

リハビリテーション科医の主戦場 回復期病棟 世界一のチームワークを目指して

リハビリテーション科医一年目、私は七栗記念病院(回復期リハビリテーション病院)を希望しました。回復期リハビリテーション病棟は、急性期治療が落ち着いた患者さんが入院し、自宅退院や職場復帰といったそれぞれの目標に合わせてリハビリテーション医療を集中的に受ける場所です。リハビリテーション科医はここでは主治医となります。

脳卒中を患って、右手足が麻痺してしまった女性。また趣味の手芸ができるように、家族のお弁当を作れるようになりたい。では、どんな練習を誰がどのくらいすればいいか。ガイドラインはありません。ここでの要はチーム医療です。患者さん・ご家族を中心に、医師、看護師、介護士、療法士、ソーシャルワーカー、栄養士、薬剤師、義肢装具士、臨床心理士…それぞれのスタッフがチームの一員となってオーダーメイドの治療を行います。医師には、リーダーの役割があります。

チームは綱引きに例えられます。メンバーがバラバラの方向、バラバラのタイミングで綱を引くと、勝てません。チームがまとまるためには目標が必要です。リハビリテーション科医は、適切な目標を考え、チームで共有し、全体を統括します。

具体的には、疾患の病態、麻痺などの機能障害や歩行困難といった能力の評価とその帰結予測、どのくらいの期間でどこまで良くなるか、その上で、患者さんの希望に沿った能力を得るためには何が必要か、阻害因子や律速因子はなにか、社会的背景も考慮して問題点を整理し、ご本人の希望を軸に長期目標を考えます。さらに、医師は長期目標を見据えて、短期目標を立て、それぞれの医療スタッフの役割を明確にします。そして進み具合を見て、カンファレンスや面談で適宜目標やリハビリテーション内容を軌道修正します。

リハビリテーション科医は“storyteller”だと教授がよくお話されています。オーダーメイドのプログラムをstoryとして組み立て、伝えて、進める。伝わらないとそれは実現できない。チーム医療はとても難しいです。まだまだ修行中ですが、チーム全員で真剣に悩んで、考えて、相談する時間が好きです。より良い方針が見つかった時、その方針でうまくいったときはとても楽しいです。落ち込んでしまった時もチームを意識すると背筋が伸びます。患者さんと話すと、楽しさと前向きな責任感を思い出します。研修医の時に感じた直感を信じて本当に良かったと思っています。

人間が好き その人がその人らしく活きるために努力を続ける医師でありたい

現在、私はリハビリテーション専攻医5年目となり、関連施設である市立伊勢総合病院に勤務しています。急性期病棟ではリハビリテーション担当医として、回復期リハビリテーション病棟では主治医として、スタッフに支えられながら日々奮闘しています。

研修医の頃、友人に「リハビリの医者って何しているの?」「なぜ必要なのか?」質問されて納得いく答えができず、悔しかった気持ちを覚えています。リハビリテーションを伝えることも課題の一つです。将来は、リハビリテーション医学・チーム医療にもっと熟達し、リハビリテーション医療を深く理解し、かつそれをその地域にあう形で提供できるように、勉強をしています。そして、故郷の青森に貢献したいです。また、リハビリテーションでは趣味や生きがいも大事にします。趣味のダンスを取り入れた予防的リハビリテーションも地域に展開したいなと、野望があります。

私はその人がその人らしく活きるために、ひたむきに努力を続ける医師でありたいと思います。病気が治っても、治らなくても、その人がその人らしく活きるために努力したい。「人間」が好きです。「人間」をみられる医師でありたい。それができるのはリハビリテーション科です。

Why don’t you join us ! 一緒に働きましょう。待っています!

 

八木橋 恵

医師
弘前大学卒
2016年度入局 七栗記念病院
2018年 刈谷豊田総合病院
2019年 藤田医科大学病院
2020年 市立伊勢総合病院

 

先輩のメッセージ

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