医師 松浦 広昂

GeneralistかつSpecialistとして

リハビリテーション医学・医療の“先進性”と“普遍性”

大学5年生の病院実習でリハビリテーション科をローテートした時に、BMI(Brain Machine Interface)という最先端の分野の存在とともにリハビリテーション医学・医療という領域を認識しました。今後再生医療やロボット医療の開発に伴い、再生医療後のリハビリテーション、ロボットを用いたリハビリテーションなど、最先端のリハビリテーションが実現するに違いないと胸を躍らせました。同時に、超高齢社会においてリハビリテーション医療が日本のどこでも必要であること、それに比べてリハビリテーション科医が圧倒的に不足していることも知りました。「最先端の領域を持ち、需要も非常に高いが人がいない」突如目前に広がったこの“ブルー・オーシャン”に目を奪われ、途端にリハビリテーション科を進路として考えるようになりました。

リハビリテーション科医はGeneralistなのかSpecialistなのか

医学生・研修医時代はリハビリテーション医学・医療の“先進性”が自分にとって強く印象に残っており、目の前の患者さんを救うにはリハビリテーション医学・医療以外もある程度幅広く知っていないといけないだろうと考えていました。振り返ってみればリハビリテーション科でも、回復期リハビリテーション病棟で様々な問題点に他科と時に併診しながら主治医として主体的に管理する中で、十分他科知識を勉強することはできるのですが、まず総合診療科に進むことにしました。

都市部のクリニックの外来診療や訪問診療、総合病院の救急医療、入院管理、時には医療過疎地域の外来・病棟とさまざまな医療を通じて、診断・治療という医師として必須の技能や姿勢を学び、家庭医として患者さんに退院後も継続的に関わることの意義も理解しました。

同時にリハビリテーション医療は医師として、総合診療科も含め何科であっても、あらゆる場面で無視できない「普遍的」なものだと改めて実感しました。ただ、リハビリテーション科医にならずとも、総合診療科としてこのままリハビリテーションを実践するのでもいいのではないかとも迷い始めました。そもそも、リハビリテーション科医とは何なのか。Generalistなのか、Specialistなのか。そんな疑問が頭から離れなくなりました。

改めて認識した高い専門性と普遍性

医師4、5年目になり、藤田医科大学を含めいくつかの教育施設のリハビリテーション科を見学することにしました。大学病院やいくつかの関連病院の病棟、外来を見学して、臨床や研究の幅が大変広く、場所によってその内容やリハビリテーション科医に対する考え方にも多様性があることを目の当たりにしました。リハビリテーション科医には、主治医としてその人を包括的に管理する総合力も求められる、つまりGeneralistでなければならない一方、装具の処方、歩行分析、筋電図、嚥下機能など専門性の高い知識・技術も必要です。一番衝撃的だったのは、その「活動」を診るという視点のユニークさです。見学の一週間そこらでは咀嚼しきれない 「リハビリテーション医学」がそこには広がっていると確信しました。リハビリテーション科医というSpecialistになることを決意し、その専門性に一番魅せられた藤田医科大学医学部リハビリテーション医学講座に入りました。

実際に転科してみると、多くの疾患を抱える高齢者へ医療・ケアを提供する上で、思っていた以上にさまざまなところでリハビリテーション医学の考え方が活用されていました。“原疾患の治療”、“リハビリテーション”、“看護”とそれぞれが単独で存在するものではなく、リハビリテーション医学はそれら全てを結びつけるポリシーであり学問であると思いました。患者さんを「活動」という医学においては大変ユニークな視点で分析し、そこから患者さんの未来を設計し、そのために必要な治療と対応を「活動」に落とし込んで考えるという思考過程こそがリハビリテーション科医の一番の専門性だと考えるようになりました。

研究は必ず臨床に活きる

藤田医科大学リハビリテーション部門の研究内容は日々の臨床との距離が近く、自分たちで開発した診断・治療機器をその場で患者さんに実践し、研究成果を目の前で体感することができるのは非常に楽しく、魅力的であると思います。活動をみるという性質上、客観的な指標やエビデンスが多くないリハビリテーション医学において、研究とはその最先端が実用化されて初めて活かされるのではなく、研究活動に携わることで、直観と客観のバランスの取れた臨床家になるために必要なトレーニングであると感じています。自分も研究に携わっており、患者さんがより活動的な入院・退院後の生活を送れるように、簡便な方法で患者さんの活動量を視覚化する活動量測定機器の開発や活動量測定の実践に取り組んでいます。

良い教育を提供できる監督を目指して

元々教師と医師の進路で迷っていた程、人に教えるのが好きです。リハビリテーション医療はチーム医療であり、リハビリテーション科医はその監督ですが、他職種教育や治療の中心にいる患者さんおよび家族への指導、日進月歩のリハビリテーション医療の普及と、さまざまな面でより良い教育を提供できるようになりたいと考えています。そのためにも、まずは早く一人前のリハビリテーション科医になれるように頑張りたいと思います。

臨床において、患者さんの問題点一つ一つに対処する術を学ぶのはもちろんのこと、それら問題点全てを持った一つのシステムである人間として対処する考え方を学ぶ。また、多くの患者さんを多くのスタッフと診ていく中で、その組織をどう運営するかというさらに広い視点を学ぶ。こういった点に興味を持ったあなたはリハビリテーション科医向きだと思います。是非、一緒にリハビリテーション医学・医療を学びましょう。

 

松浦 広昂

医師
大阪医科大学卒
2016年度入局 藤田医科大学病院
2017年 刈谷豊田総合病院
2018年 藤田医科大学病院
2019年 豊田地域医療センター

 

先輩のメッセージ

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