医師 竹中 楽

リハビリテーション科医とは
私なりの答えを少しずつ出していく

患者さんの生活そのものを診て支えたい

私は学生の頃は神経内科に興味を持っていました。神経疾患を患った方は、長期の経過の中でもその症状に対し創意工夫を凝らして生活をしていらっしゃいます。神経診察と解剖との対応が純粋に面白かったというのもありますが、やはり患者さんのこの「生活」を一緒に支えられることに惹かれていました。

5年生になり長崎に病院見学に行ったのですが、そこはリハビリテーション科医という仕事をしているドクターがいる病院でした。坂道の多い長崎という町での退院支援の話に聞き入ってしまいました。厳しいリハビリテーションで結果が出た時に、先生が患者さんと抱き合って喜んだというエピソードを聞いて、リハビリテーションって面白いなって初めて思ったんです。

そして研修医になった1年目の冬、たまたま参加した講演会でリハビリテーション科医の先生が集中治療室でのリハビリテーションの動画を紹介していたのですが、私には衝撃でした。患者さんが介助されながら起きて立ち上がると意識がよくなり、その目は輝いているように見えました。改めてリハビリテーションのすごさを感じ、「生きること」に関われる科だ、と興奮しました。長崎での経験もあり、患者さんの生活そのものを診て支えたいという私の目指していた姿は、リハビリテーション科医が最も近いのかもしれない、と考えるようになりました。

イメージは固まらなかったが、飛び込んでみた

とは言っても、その時の私はリハビリテーション科医の実際の仕事を殆ど見たことがなく、また他の科をローテートしている時にリハビリテーション科と関わることもまず無かったので(今思えばもっともっと自分の患者さんのリハビリテーションを見に行けば良かったのですが)、リハビリテーション科医の具体的なイメージがあまりありませんでした。そこで、研修先の大学病院でリハビリテーション科に所属している先輩に相談してみると、この辺りだったら藤田医科大学に実際に見学に行ってみるのがいいよ、とアドバイスをもらいました。

早速見学を申し込むと、すぐに日程が決まり、一日でしたが大学病院を見学できました。嚥下検査やボトックス注射に始まり、ロボットを用いた訓練、装具など、凄そうな発明(ごめんなさい!)を色々見せて頂きましたが、正直私はリハビリテーション科医の仕事のイメージは湧きませんでした。その時は職場の都合で一日しか休みがとれなかったので、いわゆるリハビリテーション病院である回復期リハビリテーション病院も含めてもう少し長く見学できれば良かったのかもしれません。

帰ってから研修病院の周りの人の反応も良くありませんでした。リハビリテーションの医者なんて、と言う先生もいて、そういう人にうまくリハビリテーション科医について説明できない自分にもやもやしていました。自分でも全体像を理解していない科を選んでいいのかととても悩み、藤田のリハビリテーションセミナーにも参加しました。イメージはそれでも固まりませんでしたが、沢山のリハビリテーション科医の先生のお話を聞いていると、皆さんがやりがいを持って、毎日楽しく「生活を診る」お仕事をされているというのはよく分かりました。リハビリテーション科には他の科と同様に、誇りと情熱を持って取り組める熱い「何か」はあるのだろう、ここならばいずれイメージを固められるようになるだろうと思い、藤田医科大学でリハビリテーション科医になることを決めました。

チームで取り組み、チームの一体感を感じる楽しさ

入りたての私は、早速先輩にリハビリテーション科医の仕事とは?と聞いてみました。その答えは、「リハビリテーション医学の中でできることをするのがリハビリテーション科医の仕事」というものでした。このテーマを考えながら、リハビリテーション科専攻医生活が始まりました。

実際にリハビリテーション科の研修で経験することは何もかも新しくて、本当にあっという間に時間は過ぎて行きましたが、担当患者さんの転倒のリスクマネージメントをしていて気がついたことがありました。一人のスタッフが患者さんの状態を注意していればよいのではなくて、色々な人・職種が全員で患者さんの活動をみている必要があるんです。療法士からも、看護師からも、介護士からも、視点があればあるほど良い転倒予防対策ができました。そして、実はこれはリハビリテーション医療においては他のものにも当てはまりました。

患者さんの治療プラン=リハビリテーションの計画もそうです。当然、計画は医師としての評価・判断に基づきますが、先輩の意見や、担当療法士の考え、病棟スタッフの考えなどを沢山聞くと、良いプランを練られる確率が高くなります。これは研修医で他の科を回っていた時には考えられないことでした。治療方針は医師だけで決めるのが当たり前だったから。このポイントでもリハビリテーション科はユニークだと思います。患者さんの障害は一人ひとり全く違うので、これをやればいいというゴールドスタンダードがありません。教科書をみれば答えが載っている学問ではないので、チームとして、関わる人みんなの意見を聞いて、試行錯誤しなければならない。みんなと話し合っていると自分にない考えに出逢うこともよくあって、それを取り入れてより良いプランができると、凄く面白くて楽しいです。

一番楽しいなと思ったのは、チームみんなで頭を絞って練ったアプローチで、上手く患者さんが良くなったときでした。サッカーで味方の連携が成功してゴールが決まった時みたいに、チームとしての一体感を感じました。後になって、その一体感を出せるようにチームを作っていくのがリハビリテーション科医だ、と先輩が教えてくれました。リハビリテーション医学の中でできることをする、というのが少し分かったような気がしました。

リハビリテーション科を選んで良かった

私は将来は滋賀に帰って働きたいと思っています。滋賀県の回復期リハビリテーション病棟に藤田医科大学のリハビリテーション部門も関わっており、一人前になって滋賀に戻るのが楽しみです。最後に、進路に悩んでいる先生達へ。私同様、リハビリテーション科医やリハビリテーション科のイメージがすぐにはわかない人も多いと思います。でも、少しでも興味が出ていたらそれで十分です。私もそうでしたので、皆さんも勇気をもってリハビリテーション科に飛び込んできて下さい。患者さんの活動や生活に関わることに喜びを感じられて、情熱がある人ならばリハビリテーション科は凄く楽しいし、後悔はしないと思います。私は一年間まさに「患者さんの生活を診て、支える」ことができ、リハビリテーション科を選んで良かった、と胸を張って皆さんに言えます。是非見学に来て頂いて、私と話しましょう。皆さんの悩みに今の私なりのアドバイスをさせて下さい。

 

竹中 楽

医師
滋賀医科大学卒
2019年度入局 藤田医科大学病院
2020年 刈谷豊田総合病院

 

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