研究員 熊澤 暢宏

興味を大事にしながら 新たな興味に繋げる

性格的に研究が楽しかった

私がリハビリテーション医療を初めて知ったのは高校生の頃、祖父が入院した時です。それまでは治療といえば薬や手術によるものしか知らなかったので、運動による病気の治療として興味を持ちました。そして理学療法士になるべく大学へ通い、卒業後は大学院に通いながら訪問リハビリテーションに3年間従事しました。利用者の方々は個性豊かで、一人ひとりにあわせたリハビリテーションプログラムを提供するのは決して簡単ではなく、やりがいがあり充実した3年間を過ごしました。

研究員として働くことを決意したのは非常に個人的な興味で、当時募集していたRSH(ロボティックスマートホーム)という研究テーマが面白そうだと感じたからです。もともと学生の頃から研究に興味を持っていたのですが、それはロジカルシンキングを身につけたいと思ってのことでした。どんな方の治療に携わるとしても多面的に物事を捉え、論理的に思考・判断する能力は必要で、その手段として研究を考えていました。その後、幾つかの研究に関わったのですが、実際の計測作業、環境構築、検証が楽しくて、研究が面白いと思うようになったのを覚えています。また未知/既知を問わずさまざまな事を検証する事にも楽しさを感じていました。ああしたらダメだったけど、こうしたら上手くいく、といった具合にです。

どんな進路にでも言えますが、そこに何がしかの価値を見出したからこそ進むのだと思います。私の場合は上述のように研究関連の諸作業、検証が面白く、今後も継続して取り組みたいと興味としての価値を見出したので研究の道に進むことを決めました。管理や運用、それに伴う諸手続きなど、楽しいことばかりではありませんが、自分で価値を見出した進路を選択したことで、今でも全く飽きることなく携わる事ができています。

支援機器を開発するやりがい

私が思うリハビリテーション工学の面白さとは、その人にとって真に有用な支援機器の作製に関与できる事です。支援機器は患者さんごとにオーダーメイドのセッティングも出来ますが、セッティングを変えれば他の方への転用も可能ですので、多くの方に貢献できます。臨床で一人ひとりの方の治療に向き合うのとはまた一味違ったやりがいがあると考えています。

藤田医科大学を選んだ理由は幾つかありますが、リハビリテーション工学の研究をするうえで、計測機器・設備面が充実しており、かつ関連職種と良い関係が構築されている事が決め手でした。藤田医科大学のリハビリテーション部門は日本で最大規模の病床数、設備を備えており、これは研究する上で非常に大きな強みと言えます。サンプルサイズが大きい事はデータの価値を高めますし、さまざまな機器によって多角的な検証が可能です。また研究を臨床応用するうえでリハビリテーション科医と密な連携を取れる事は、プロジェクトを進行するにあたって意思決定をスピーディーに行え、かつ活動・病理両面からリスクや改善点のアドバイスを貰えるため、非常に貴重であると考えています。

向き不向きはやってみてから考えるべき

どんな研究でも実験プロトコルを丁寧かつ適切に履行する必要がありますが、研究によってはプロトコルが複雑化することもありますので、こだわりが強い方や凝り性な方は楽しさを感じやく適応しやすいのではないかと思います。また何よりも、興味がある分野を持っている方は研究に向いていると思います。研究とは興味を持って探求することなので、その思いが強ければ経歴や資格を問わず活躍できると思います。そして、自分では研究に向いていないと思っていた人でも、やり始めてみると楽しくなってしまうことは珍しくないです。考え、思い悩むことも大事ですが、百考は一行にしかずともいいますので、実際にやってみるのが自分のお勧めです。

自分の持っている興味や思いを大事にして

いつかは自信を持って「これは私が考案したものです」と言える機器開発をしたいと思っています。リハビリテーション工学に関与する身として、多くの方からこれがあって良かった、と言っていただける機器を作成できれば最高です。まだまだ多くの先生方に指導・助言を頂いている身なので、知見・技術をより深め、精進していきたいです。

これから研究の道に進もうと思っている方は、自分が持っている興味や思いを大事にして下さい。その興味や思いが強ければ経歴や資格も、はてはその人の個性をも超えて、その分野に挑戦できると思います。そこでは諦めや妥協といったものを超えて、まだ見ぬさまざまな素晴らしい道が続いていると思います。私自身も興味から関わり始めた道ですが、療法士として働いていた頃は、将来リハ工学に携わったり、機器・プログラム作成をするとは思ってもみませんでした。関わることで見出される興味や才能もありますので、皆様には是非遠慮することなくあらゆることに挑戦して欲しいです。

 

熊澤 暢宏

理学療法士
研究員
藤田医科大学医療科学部リハビリテーション学科卒
2017年入職 藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科 研究員

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