先進回復期リハビリテーションシステム

介護保険ができた2000年頃、「リハビリテーション前置主義」という言葉が使われていました。リハビリテーション医療を集中的に行って十分に改善してから、介護を提供しましょうという意味です。この集中的なリハビリテーションの役割を担うのが回復期リハビリテーションです。どのような回復期リハビリテーションが効果的なのか、私たちは追求を続けて来ました。

2000年以前には、リハビリテーション医療は平日に療法士が行うものでした。その慣習を打破すべく、藤田医科大学七栗記念病院(当時の藤田保健衛生大学七栗サナトリウム)では、療法士のみならず、看護師、医師、色々な職種のコミュニケーションを高め、365日休みなく、一日中活動的な生活を送ってもらう、新しいリハビリテーション医療を開始しました。これがFull-time Integrated Treatment (FIT) Programです。FIT programのシンボルとも言える6m幅の廊下は訓練の場かつコミュニケーションスペースであり、療法士と看護師の相互理解に非常に有用です。

慣れた療法士が週7日訓練を行うためのシステムTriangle-pairsも開発されました。3人の療法士が組みになって患者さんの主担当と副担当を受け持つシステムです。訓練室で出来るようになってきた日常生活活動(ADL)は病棟でしている状態にしなければなりません。そのスムーズなバトンの受け渡しが先進回復期システムには必要で、看護師・介護福祉士の活躍が必須です。

回復期リハビリテーション病棟に入院した6,500名以上の脳卒中データベースが作られ、現在もさらにデータが蓄積され続けています。そこから脳卒中の障害構造の解明や、ADLの帰結予測など多くの研究活動が生まれています。FIT programは一日2時間の訓練から3時間の訓練へと進化し、その訓練時間の違いがリハビリテーション帰結を良くしたことも証明しました。誰でも簡単に帰結を予測出来るようにと、七栗のデータベースから条件検索で似た患者を見つけ出してすぐにグラフを描くCARD (Comprehensive and Accessible Rehabilitation Database)も開発しました。

2018年からは、七栗記念病院での多くの経験と知見を基に、藤田医科大学病院にも60床の回復期リハビリテーション病棟を開設しました。専門性の高いプロフェッショナル集団とリハビリテーションロボットなどテクノロジー満載の未来型のリハビリテーション環境を構築しています。大学病院外の患者さんの受け入れも行なっていますが、大学病院内の患者さんについては、発症(受傷)後から切れ目のない高密度・高強度のリハビリテーションを継続することで、他の研究機関にはないデータが蓄積されており、それを基にした多くの臨床研究を展開しています。

訓練とコミュニケーションの場となる6m幅の廊下は七栗記念病院のシンボル的空間

積極的な多職種コミュニケーション:朝カンファレンス(七栗記念病院)

FITprogram導入により明らかな日常生活活動の向上がみられます

6,500名以上の脳卒中データベースから作成されたCARD

データベースを用いることにより、機能帰結の予測がより正確に行えるようになり適切な治療に結びつきます。また多数の臨床研究が生まれています。

最新のテクノロジーを最大限活用し急性期からのノンストップな回復期リハビリテーションモデル(藤田医科大学病院)

トヨタ自動車株式会社と開発したリハビリテーションロボットなど多数のロボットを設置しています。

懸垂装置を備えた広い廊下は訓練の有効なスペースとなっています。

 

研究一覧

研究Research activities