リハビリテーション医学・医療が対象とする「活動」において、「動く(運動)」機能はその基盤としてとても重要な働きをしています。運動機能の中枢、つまり司令塔と伝令の役割を担っているのが脳・脊髄を中枢とする神経システムです。
私たちは、脳血管障害などに起因する神経システムの損傷によって運動機能に障害を受けた各種病態において、運動機能の回復に関わるメカニズム(神経機能の変化や神経経路の再構築など)の解明を課題として研究を行っています。
神経システムの評価には経頭蓋磁気刺激や核磁気共鳴画像など最先端の評価技術を駆使し、ロボットを用いた運動の定量的評価と組み合わせた複合的な検討を行っています。また、末梢電気刺激・磁気刺激、反復経頭蓋磁気刺激、経頭蓋直流電気刺激、迷走神経刺激など、神経システムに対する種々の治療的介入、すなわちニューロモデュレーション(neuromodulation)により、上記回復機構への働きかけによる運動機能回復を促すなど、新しい治療法の可能性も追求しています。
経頭蓋磁気刺激を用いた脳内運動領野の機能性評価
磁気の刺激により脳内に生じる電場によって脳の神経細胞を興奮させ、脳の神経細胞同士や末梢神経への繋がりの評価を行うことができます。これにより、神経ネットワークの詳細な評価を行い運動機能回復のメカニズムを研究しています。
上肢ロボット(Kinarm Exoskeleton Labs™)を使用した運動機能評価
右図は上肢運動機能評価に用いられている到達運動課題と同課題実行中の手先位置の運動軌道を示しています(脳卒中患者さん1例の麻痺側・非麻痺側の入院時から退院時にかけての軌道の変化)。